巻末の「ボブ・ディラン ノーベル賞受賞講演」を読みました。
ボブ・ディランの文学観がなんとなく分かるような気がしました。
彼が中学校で読んで以来、つねに彼とともにあった本として彼が
選んだ三冊の文学作品の「あらすじ」紹介はやや冗長なレビュー
のように感じました。
どの文学作品が、彼のどの歌詞にどんなふうに影響を与えたのか、
具体的に知りたいです。TEDのような研究者の講演を聞きたいです。
柴田先生の訳、特に脚注、には感心しました。
例えば、
ボブ・ディランが「典型的な中学の読書を通して、人生を見る見方、
人間の本性に対する理解、物事を測る上での尺度を培ったのです」
と語った箇所の「脚注」には、同感しました。引用してみます。
脚注6
「半世紀前の中学校ではこうした大部の小説を読むのが『典型的』だった
と聞くと隔世の感がある。今日、スコットの『アイヴァンホー』(1819)、
ディケンズの『二都物語』(1859)はおそらくもうほとんど読まれないし、
ほかの不朽の名作もどこまで読む機会があるか……」(158頁)
中学生の頃のボブ・ディランは、読書大好きの文学少年だったのでは。
「典型的」なふつうの米国中学生ではなかったような気がします。
「偉大なる米国文学」だけでなく、世界文学を次々に読み漁るような
早熟の少年だったのではないかと想像しました。
「ボブ・ディラン ノーベル賞受賞講演」は、締めくくりが印象的。
「歌というのもそういうものです。私たちの歌は生者の国に生きているのです。
けれど歌は文学とは違います。歌は歌われるものであって、読まれるものでは
ありません。シェークスピアの戯曲の言葉は、舞台の上で演じられるために
書かれました。歌の歌詞も、紙の上で読まれるためではなく歌われるために
書かれたのです。みなさんにも、聴かれるために書かれた歌詞を、その意図
どおりに聴いてもらえればと思います―――コンサートで、レコードで、
あるいは近ごろ出てきたもろもろの新しい聴き方で。
もう一度、ホメロスに戻ります。
『私の中で歌いたまえ、おお詩の女神よ、私を通して物語を語りたまえ』
(174頁)
ホメロスの言葉を引用して講演を締めくくるなんて、
反戦詩人であり作詞作曲家であり歌手でもあるボブ・ディランらしい、
素晴らしい終わり方だと思いました。
ミュージックを歌い、ミュージックの歌詞で「物語」を語ってきたボブ・ディラン。
ミュージックの女神ミューズが彼の中で歌った「オンガク」は彼の頭の中で共鳴し、
彼自身のミュージックとして音声となって聞こえてきます。
目でしか見えない文字。文字だけによる「文学」の限界をはるかに超えて。
雨や風の歌のように、そんな「オンガク」のような講演に聞こえました。
備考
柴田訳:
舞台の上で演じられるために書かれました。歌の歌詞も、紙の上で読まれるためではなく
読者による、英語と韻に忠実な直訳:
舞台「ステージ」の上で演じられるために書かれました。歌の歌詞も、紙の「ページ」の上
「の文字」で読まれるためではなく
柴田訳:
『私の中で歌いたまえ、おお詩の女神よ、私を通して物語を語りたまえ』
読者による、英語とミュージックに忠実な直訳:
『私の中で<ミュージックを>歌いたまえ、おお<ミュージック>の女神
<ミューズ>よ、私を通して物語を<歌詞として>語りたまえ』
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MONKEY vol.13 食の一ダース 考える糧 雑誌 – 2017/10/15
柴田 元幸
(編集),
リオノーラ・キャリントン
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堀江 敏幸
(その他),
西 加奈子
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戌井 昭人
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小山田 浩子
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- 本の長さ175ページ
- 言語日本語
- 出版社スイッチパブリッシング
- 発売日2017/10/15
- 寸法19 x 1.5 x 26 cm
- ISBN-104884184157
- ISBN-13978-4884184155
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2017年10月16日に日本でレビュー済み
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2017年10月17日に日本でレビュー済み
「食」事は読んでも楽しめ、また美味しく感じられるもの、一方で、それが出来ない事態に陥ったと書かれてしまえば、必ず至るであろう悲惨な結末を想像してしまう。命に関わる存在感、けれどもそれだけで終わらない。
数でいえばひとつ足りない、本号の「食」が関わる各物語は、だから読み終わる度に全く異なる感想を持たされます。共通項のない人物、現れるものに食べ物、異なる背景、けれど唯一ある食べるという行為だけで入り込めるすべての話に、人が思える事が並んでいて、口にする物の味があります。あるかないかに関わりなく、ああだこうだと想像するそれは、愉快にもなり、不快にも近付く。ただただ舌に残したい、冷たさにも繋がる。見たくもないけど、見たくなる。それは何かと訊きたくなる。気持ちが忙しない読書の終わりには、面白かったという感想が素直に収まります。どの話も凄かった。改めて、小説を読む喜びを教えて貰えた気持ちでいっぱいです。
猿からの質問では、池田エライザさんの逸話に思わずなるほど、と納得、次いで触ってしまう苦笑いが誘われるのは私だけじゃないはずです。
最後に、竹花いち子さんの手によるイラスト料理にも注目です。表現と味が等しく成り立つ証拠です。
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