もう『文学界』も8月号が店頭というタイミングですが、ふた月前の6月号に平野啓一郎さんの「ある男」という小説が掲載されている。これはしばらくの間、通勤電車の楽しみだった。
平野さんの語りはとても滑らかで、快適で、やさしい。そう、そんな体験をしたわけではないけれど平野さんがレクサスか何か乗り心地のいい車のハンドルを握って「ついでですから、近くまで送りましょう」と言ってくれて、綺麗に掃除された快適な助手席に乗せてくれると、夜の高速を走りながら「実はこんなことがありましてね」と手際よく、しかしゆったりと、そして話が盛り上がるところでは笑いながら少し声が裏返ったりしながら、人間模様に関わるとても興味深いエピソードを話してくれる。そんな感じ。
教養の深い、おしゃれな作家ですから、ちょっとずつ読んでいるうちに、息子にと思って岩波文庫の『変身物語』(上・下)をamazonで注文してしまったり、横浜に回鍋肉カレーを食べに行こうとグーグルで調べたりという読み手の方も道草を楽しんだり、作家の平野さん自身は寝る前にアルコールって習慣あるのかななどと想像したりする。
それにしても、書き出しが漱石の『こころ』に似ているからというわけではないが、平野さんが「自分は、いま、これを書かなければならないことしか書かない」と言われているように、ネタバレになるけれども触れてしまうと、ここには「死刑」の問題、「民族ヘイト」と北朝鮮のことが出てくる。小説の構想を固める段階では、たった今、それらが大焦点になっていると予想した人は少なかっただろう。さすがの近未来透視力だ。
そして、ここでも、だれか他の人と自分が入れ代わったら?というテーマが…。是枝監督の『万引き家族』も一面にそんなテーマを持つ。だれしも考えることなのかはわからないが、自分や社会を考える想像の翼を少し広げてくれる視点、考え方だと思う。
登場するある女性がとても魅力的。単行本ももうすぐ出るのかもしれないけれど、全文掲載の『文学界』6月号もamazonなどで簡単に手に入るみたい。お薦めです。

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文學界2018年6月号 雑誌 – 2018/5/7
▼新作長編一挙掲載
平野啓一郎「ある男」(550枚)
▼カラーグラビア&インタビュー
ディーン・フジオカ「日本とインドネシアの〝絆〟」
▼新連載
石川九楊「河東碧梧桐――表現の永続革命」
▼インタビュー
熊野純彦「いま、なぜマルクスか?」
平野啓一郎「ある男」(550枚)
▼カラーグラビア&インタビュー
ディーン・フジオカ「日本とインドネシアの〝絆〟」
▼新連載
石川九楊「河東碧梧桐――表現の永続革命」
▼インタビュー
熊野純彦「いま、なぜマルクスか?」
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年7月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中身が充実してます。
2018年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
平野啓一郎氏の新作目当てで購入しました。期待通りの作品でしたので9月に刊行される単行本も購入しようと思います。
2020年6月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
平野さんの作品が読みたくて購入。こちらのほうが安いし、他の作家さんの作品も知る事ができてよい。
2018年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
平野啓一郎さんの「ある男」素晴らしかった。
里枝さんと悠人君とはなちゃんの幸せを願うほど話の中にのめり込んだ。
たくさんの人に読んでほしい。
里枝さんと悠人君とはなちゃんの幸せを願うほど話の中にのめり込んだ。
たくさんの人に読んでほしい。