1)ファーウェイ本部への直接取材は貴重!!
著者は、中国ウォッチャーになって丸30年になるジャーナリストである。日本記者団の「団体ツアー」ではなく
、ファーウェイ本社内を「個人旅行」のように見せてもらえませんか、との申請が効を奏したのか、取材許可を
得ることに成功している。今のファーウェイの実顔を知る貴重な著作となっている。
タワマン群の谷間には、出張社員用ホテル「安朴逸城」がある。最新の5つ星ホテルに1泊1万円以下で宿泊できる
ほどの豪華な作りだ。
ホテルのロビーからは、それぞれの目的地によって、異なる「社内バス」が出ている。一番遠い松山湖の研究開発
本部までは、1時間弱もかかる。
ファーウェイの本部は、ホテルから3㎞ほど西に行ったところに広がっている。東西1.6㎞、南北2㎞ほどの広大な
敷地を、11区域に分けている。
しかも、5万人が働く巨大なオフィス群は、高層の建物が2棟しかなく、基本的に平屋構造になっている。社屋を高
層棟にすると、エレベーターを待つ時間が非効率であり、かつ無用なストレスを生むという配慮に基づく。
また、「食在中国」(食は中国にあり)という言葉があるように、ファーウェイはランチタイムを非常に重視して
いる。5万人の社員全員が一度にランチを取る光景は荘厳だ。
入社すると、他社とは比較にならない年俸と、深圳市の戸籍を与えられる。8万人以上の社員に、自社株も賦与さ
れる。タワーマンションの広い社宅を格安で借りられ、マイカー出勤できる。
社内の地下駐車場も見せてもらうと、トヨタやホンダの高級車がズラリ停まっていた。
ともかくも、任CEOの「教育こそすべて」という考えに基づき、社員教育にも力を注いでいて、それこそ「社員と
取引先企業に多くを与え、会社も多く取る」という経営哲学が息付いている企業なのだ。
2)アメリカは、5G(第5世代)通信規格では、負けられない!!
2017年に中国は「国家情報法」=俗にいう「スパイ法」という法律を施行した。中国国民やその企業に世界中どこ
にいても中国政府に情報収集の点での協力義務付けを行った。
特に、中国は、ファーウェイを基軸に一気に通信システム覇権を崩しにきたという危機が差し迫った。4Gと5Gで
は技術的ギャップがあまりに大きいのである。
2018年7月にはカナダの首相は「ファイブ・アイズ」の諜報機関トップ5人を密かに招待して地政学的脅威について
協議もした。殊に、アメリカとしては、5G通信規格では覇権争いに負けるわけにはいかず、国防権限法に基づき対
抗する姿勢をみせる。
中国のZTEなどは「エンティティ・リスト」に載ったこともあり、解除するのに多額の罰金を払った経緯もある。
しかし、これは、ZTEの7倍以上の規模を誇る「本命」のファーウェイ叩きの予行演習のようなものだ。
ZTEとファーウェイはライバル企業であり、解除の条件の一つに「司法取引」がされたのではないか、そういう勘ぐ
りが走る。実際、2018年12月には孟晩舟CFOをカナダで逮捕、2019年1月には、イランへの違法な金融取引や企業
秘密の窃取の疑いで起訴につながっているからだ。
さらに、2019年2月のスペインで、GSMAが主催する世界最大のモバイル見本市「MWC2019」においては、大敗北
ともいえる苦渋を味わった経緯もある。
ヨーロッパ市場という地政学的脅威もさほどないところで、トランプ政権こと軍事強行派による「包囲網」は、欧州
をいかにファーウェイとの取引を排除するか、近々の課題となっている。
現状、引き続き「米禁輸措置」によって、ファーウェイは、依然「エンティティ・リスト」の名簿に載せられたまま
である。「エンティティ・リスト」は連座的包囲網で、協力する国とは米国は取引を行わない。中国の冊封体制とも
いうべき一帯一路構想と何ら遜色のないものとなっている。
巨視的にみると、第一段としての貿易戦争、第二段としてのハイテク覇権戦争、第三段としての経済ブロック化戦争
、と段階を経るごとに世界は由々しき方向に向かっている。
3)台湾を制する者がハイテク戦争を制する!!
ファーウェイの5G戦略は、ホンハイの工場での製品の生産と、TSMCの工場での半導体チップの生産が生命線とな
っている。各々の2つの工場を牽引する郭台銘(かく・たいめい)会長と、張忠謀会長は、性格も経営手法も対照
的だが、台湾では「長年の盟友」である。
さらに、海を挟んだ深圳(しんせん)の任CEOが加わる。この「三巨頭」は互いに盟友関係にあり、一連託生の関
係にある。「中華民族の隆盛」という愛国心では、志は同じくする。
そうすると、強固の体制であり、トランプ政権にとって楔(くさび)を打ち込むことは不可能か、とも思える。
しかし、隙がない訳ではない。
中国とアメリカと決定的に違うのは、石油と半導体の自給率が低く、輸入に頼らざる得ない点である。
台湾企業が相次いで産業スパイ容疑がかけられると、TSMCは日本とともに世界規模の半分のシェアを持つ点から
しても不利益である。何も愛国心の対象は、習近平の中国である必要はない。見切りをつける可能性もある。
だからこそ、習近平主席の「悲願」である台湾統一を早めることにある。台湾統一は、ホンハイとTSMCも北京の
意のままにできる。クリミア方式の無血統一が理想ではあるが、昨今、「一国二制度」の香港は、2019年夏の逃
亡犯条例の改正を巡って、反中感情を爆発させている。
習近平が「一国二制度」を台湾に目論むとしても、既に自由の空気を知った台湾が、果たして中国になびくのか!?
今後の動向は見逃せない。何より、台湾は日本と同じく海洋国家である。到底、ランドパワーに屈するとは思えな
いのである。
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ファーウェイと米中5G戦争 (講談社+α新書) 新書 – 2019/7/20
近藤 大介
(著)
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購入オプションとあわせ買い
なぜトランプ政権は、中国・ファーウェイを執拗に叩くのか?
そこには5G時代のハイテク技術覇権を米中どちらが握るかという戦いがある。
目前に迫った5G時代。いままでの4Gよりも圧倒的な超高速、大容量、低遅延、多接続を実現する5Gの出現は、社会の姿を大きく変える。
その5Gで現在トップを走っている企業が、中国・ファーウェイ。
このままでは現在優位に立っている技術覇権の座を中国に奪われることに強い危機感を覚えたトランプ政権内の「軍事強硬派」が仕掛けたのが、ファーウェイ叩きの真相だ。
日本も無関係ではいられない
今後の世界経済の趨勢を握る米中ハイテク戦争の行方とは。
ファーウェイ本社への直撃取材、
米中の間で揺れる欧州の動向、世界半導体製造の命運を握る台湾の動向を含め、
問題の核心を徹底検証する。
そこには5G時代のハイテク技術覇権を米中どちらが握るかという戦いがある。
目前に迫った5G時代。いままでの4Gよりも圧倒的な超高速、大容量、低遅延、多接続を実現する5Gの出現は、社会の姿を大きく変える。
その5Gで現在トップを走っている企業が、中国・ファーウェイ。
このままでは現在優位に立っている技術覇権の座を中国に奪われることに強い危機感を覚えたトランプ政権内の「軍事強硬派」が仕掛けたのが、ファーウェイ叩きの真相だ。
日本も無関係ではいられない
今後の世界経済の趨勢を握る米中ハイテク戦争の行方とは。
ファーウェイ本社への直撃取材、
米中の間で揺れる欧州の動向、世界半導体製造の命運を握る台湾の動向を含め、
問題の核心を徹底検証する。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2019/7/20
- 寸法11.6 x 1.4 x 17.3 cm
- ISBN-10406516916X
- ISBN-13978-4065169162
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商品の説明
著者について
近藤 大介
1965年生まれ、埼玉県出身。東京大学卒業、国際情報学修士。講談社『週刊現代』特別編集委員。明治大学国際日本学部講師(東アジア国際関係論)。2009年から2012年まで、講談社(北京)文化有限公司副社長。『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』『対中戦略』『日中「再」逆転』『中国模式の衝撃』『活中論』他、著書多数。近著に『未来の中国年表』(講談社現代新書)『2025年、日中企業格差』(PHP新書)『習近平と米中衝突』(NHK新書)がある。
1965年生まれ、埼玉県出身。東京大学卒業、国際情報学修士。講談社『週刊現代』特別編集委員。明治大学国際日本学部講師(東アジア国際関係論)。2009年から2012年まで、講談社(北京)文化有限公司副社長。『パックス・チャイナ 中華帝国の野望』『対中戦略』『日中「再」逆転』『中国模式の衝撃』『活中論』他、著書多数。近著に『未来の中国年表』(講談社現代新書)『2025年、日中企業格差』(PHP新書)『習近平と米中衝突』(NHK新書)がある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2019/7/20)
- 発売日 : 2019/7/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 406516916X
- ISBN-13 : 978-4065169162
- 寸法 : 11.6 x 1.4 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 468,773位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 585位講談社+α新書
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2019年7月27日に日本でレビュー済み
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2019年12月20日に日本でレビュー済み
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米中の動向が気になるよね〜?私は気になります!
米中がモメて経済不安が円高に振れると困るんだよ。ドル建て預金しちゃってるので。。
個人的なことはさておき、5G戦争、気になるよね?だってもう目の前に5G通信がきちゃってるんだから。
まず、現状把握、情報収集、そして予測のためにも本を読んでおこうと思う。
米中がモメて経済不安が円高に振れると困るんだよ。ドル建て預金しちゃってるので。。
個人的なことはさておき、5G戦争、気になるよね?だってもう目の前に5G通信がきちゃってるんだから。
まず、現状把握、情報収集、そして予測のためにも本を読んでおこうと思う。
2019年8月14日に日本でレビュー済み
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ファーウェイを使った中国の戦略がよくわかった。それに、意地でも、おさえつけようとする、アメリカの戦略がわかった。新冷静時代の到来というのにも納得。
2020年11月2日に日本でレビュー済み
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アメリカ対中国戦争がアメリカ対アジア・EU・中国・アフリカ・ロシアの戦争になっている。歴史の転換が始まっているように思います。資本主義の限界、新しい秩序が作られていくのかも知れません。
2020年9月23日に日本でレビュー済み
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米中貿易戦争について深く理解することができ、その貿易戦争による影響はどのように各国にもたらすのかはしっかりと論じてくれた。研究論文の参考文献として使えるべきである。経済学について研究している人にとって
2019年12月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多くが公開された情報を集めた内容で、米中対立についてもこれといったオリジナルな視線は感じられなかったが、外国人記者としてファーウェイ本社取材を許され、そのスケールの大きさとハイテクぶりを伝えたレポートは貴重なもの。軍をリストラされた後に起業し、国内では国有企業に割り込めなかったことから、ロシアを皮切りに新興国で実績を残しつつ自主技術の開発に注力し、ファーウェイを世界一の通信企業に育て上げた創業者・任正非CEOの、オープンで従業員を厚遇する経営姿勢にも好感を持った。ご本人を知らないからなんとも言えないが、実際に会ったらきっと松下幸之助をさらに大きくしたぐらいの大人物なのでしょうね。
2019年10月25日に日本でレビュー済み
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とにかくおもしろい!
ただ対米追従の日本は確実に衰退すると分かったことはつらいものがあります
ただ対米追従の日本は確実に衰退すると分かったことはつらいものがあります