本書の筆者と同様、自身も北京に駐在しながらこの国の変化のスピードを目の当たりにしてきた一人として、感想を記したい。
駐在員仲間の間で評判になっていると聞き本書を手に取ってみたが、単なる事象の羅列ではなく、中国で起きている数々の変化を、時に自身の体験を交えながら、また時には詳細に調べ上げたデータを駆使しながらわかりやすく解説してくれており、上海へ出張する往復の機内で一気に読了した。
私自身中国で暮らす日系企業の駐在員として、日本本社や中国を知らない友人達に、いかにして生の中国を伝えるかに腐心してきたが、本書が代弁してくれている内容は非常に多い。中国ビジネスに関わる読者が多かろうが、是非、中国に行ったことがない、中国を知らない方にこそ読んでいただきたい。本書は決して単純な中国礼賛本ではない。もちろん日本を卑下した自虐本でもない。自らが北京に居を構え、キャッシュレス社会を切り口に、実に見事に現在の中国事情の一面を伝えてくれている。中国に対する感情は人それぞれであり、無理に好きになる必要はないが、この国がすでに相当な力をつけ、日々イノベーションを起こし続けていることは紛れも無い事実である。本書を通じてそれを知る日本人が増え、自身の、自国の将来について思いを巡らせるきっかけになれば、筆者も本望なのではないか。
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キャッシュレス国家 「中国新経済」の光と影 (文春新書 1213) 新書 – 2019/4/19
西村 友作
(著)
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購入オプションとあわせ買い
現金が消えると、どのような社会になるのか!?
「キャッシュレス国家」中国の実態を、北京在住の日本人経済学者が徹底分析!
いま日本では国をあげてキャッシュレス化を推進しているが、そのはるか先を行くのが中国だ。スマホの決済(支払い)アプリが広くいきわたり、いまや電子マネーで払えない場所はほとんどない。買い物はもちろん、お年玉もご祝儀もキャッシュレス!
こうした経済システムは中国で「新経済」と呼ばれている。
本書では、いま中国で続々と誕生している新ビジネスを紹介。カーシェアリングやシェア自転車といった有名なものにはじまり、料理や食材のデリバリー、無人カラオケ、小型フィットネスジム、さらには病院の受付、支払いまでスマホひとつで済んでしまう中国の今が分かる。
では、なぜ中国で「新経済」が発展してたのか。
その背景にはイノベーションによる経済成長を目指す中国政府の後押しがあったことを、データを駆使して示す。また山積する社会問題にこそビジネスチャンスがあり、そこでイノベーションが起こっているという中国の実情を、生活者の視点で詳細に解説する。
そして今、「新経済」はビジネスの枠を超えて、中国政府の社会統治(ガバナンス)に活用されようとしている。キャッシュレス経済とは個人情報を利便性と交換するシステムだ。だからプラットフォームには必然的に個人情報が集まる。個人の信用情報を用いた壮大な社会実験に取り組む中国の現状を考察する。
最後に指摘するのが新経済の「影」だ。中国では新しいビジネスが数多く誕生しているが、成功ばかりでなく、失敗するケースも少なくない。そうした現実を指摘した上で、日本が「中国新経済」と、どのような協力関係を結べるのかを考察する。
「キャッシュレス国家」中国の実態を、北京在住の日本人経済学者が徹底分析!
いま日本では国をあげてキャッシュレス化を推進しているが、そのはるか先を行くのが中国だ。スマホの決済(支払い)アプリが広くいきわたり、いまや電子マネーで払えない場所はほとんどない。買い物はもちろん、お年玉もご祝儀もキャッシュレス!
こうした経済システムは中国で「新経済」と呼ばれている。
本書では、いま中国で続々と誕生している新ビジネスを紹介。カーシェアリングやシェア自転車といった有名なものにはじまり、料理や食材のデリバリー、無人カラオケ、小型フィットネスジム、さらには病院の受付、支払いまでスマホひとつで済んでしまう中国の今が分かる。
では、なぜ中国で「新経済」が発展してたのか。
その背景にはイノベーションによる経済成長を目指す中国政府の後押しがあったことを、データを駆使して示す。また山積する社会問題にこそビジネスチャンスがあり、そこでイノベーションが起こっているという中国の実情を、生活者の視点で詳細に解説する。
そして今、「新経済」はビジネスの枠を超えて、中国政府の社会統治(ガバナンス)に活用されようとしている。キャッシュレス経済とは個人情報を利便性と交換するシステムだ。だからプラットフォームには必然的に個人情報が集まる。個人の信用情報を用いた壮大な社会実験に取り組む中国の現状を考察する。
最後に指摘するのが新経済の「影」だ。中国では新しいビジネスが数多く誕生しているが、成功ばかりでなく、失敗するケースも少なくない。そうした現実を指摘した上で、日本が「中国新経済」と、どのような協力関係を結べるのかを考察する。
- 本の長さ234ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2019/4/19
- 寸法11 x 1.2 x 17.3 cm
- ISBN-104166612131
- ISBN-13978-4166612130
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登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2019/4/19)
- 発売日 : 2019/4/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 234ページ
- ISBN-10 : 4166612131
- ISBN-13 : 978-4166612130
- 寸法 : 11 x 1.2 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 423,114位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
高度成長を謳歌した中国も、労働力人口がマイナスに転じており、民間部門の債務水準も高いので資本ストックも従来ほどの成長を見込めない。となると経済成長を下支えするためには、全要素生産性アップ(イノベーション=創新)が必要ということになる。
データが価値を生む時代になり、決済手数料を無料にしてでも個人情報を獲得しようという流れがある。クレジットカードと異なり、QRコード決済は導入コストが非常に低く、露天商や屋台でも簡単に導入したことから爆発的に普及した。決済シェアを上げてデータ獲得で優位に立つためには、決済の対象となる自陣営提供サービス(貨物配送、外食デリバリー、ライドシェアなど)の魅力向上が大前提。アリババのアリペイとテンセント系のウィーチャットペイがキャッシュレス決済で激闘を繰り広げ、B2Cのイノベーションがどんどん積み重なっている。
日本では「中国でキャッシュレス化が進んだのは偽札対策だ」とまことしやかに語られるが、そんな上から目線の論評に著者は警鐘を鳴らす。実際に偽札に当たることはほとんどなく、「現金の使い勝手が非常に悪かったからこそキャッシュレス化が進んだ」と素直に理解すべきだという。
サービスの良否を顧客が評価し、優良とされた事業者は優先的に客を回してもらえるようになる。逆に、顧客の側も評価されており、優良な顧客は混雑時でも優先的にサービスを受けることができる。信用スコアを上げれば、特典が増えるから、中国人は個人情報・プライバシーをあまり気にせず、スコア向上に熱心だ。
アリババとテンセントの激闘の結果、悪質な業者は淘汰され、その結果、食の安全が高まり、白タク、ダフ屋も減少している。中国政府も国民の不満を緩和するため、数々の社会的課題の解決にイノベーションが役立つことを期待するとともに、政府としても各社の信用スコアのコア部分を統合して「国民への信賞必罰」に活用しようともしている。
ただ、両陣営のキャッシュレス・ビジネスモデルにも死角はある。サービスの魅力向上競争は農民工が支えており、労働力人口の減少下では持続可能ではないし、現行のサービスの多くは中国人向け(中国語ができる人向け)に特化しており、外国人には利用困難なものが多い。そのような課題の解決(労働集約型から自動化)に日本企業の出番があるのではないかと指摘するのである。
データが価値を生む時代になり、決済手数料を無料にしてでも個人情報を獲得しようという流れがある。クレジットカードと異なり、QRコード決済は導入コストが非常に低く、露天商や屋台でも簡単に導入したことから爆発的に普及した。決済シェアを上げてデータ獲得で優位に立つためには、決済の対象となる自陣営提供サービス(貨物配送、外食デリバリー、ライドシェアなど)の魅力向上が大前提。アリババのアリペイとテンセント系のウィーチャットペイがキャッシュレス決済で激闘を繰り広げ、B2Cのイノベーションがどんどん積み重なっている。
日本では「中国でキャッシュレス化が進んだのは偽札対策だ」とまことしやかに語られるが、そんな上から目線の論評に著者は警鐘を鳴らす。実際に偽札に当たることはほとんどなく、「現金の使い勝手が非常に悪かったからこそキャッシュレス化が進んだ」と素直に理解すべきだという。
サービスの良否を顧客が評価し、優良とされた事業者は優先的に客を回してもらえるようになる。逆に、顧客の側も評価されており、優良な顧客は混雑時でも優先的にサービスを受けることができる。信用スコアを上げれば、特典が増えるから、中国人は個人情報・プライバシーをあまり気にせず、スコア向上に熱心だ。
アリババとテンセントの激闘の結果、悪質な業者は淘汰され、その結果、食の安全が高まり、白タク、ダフ屋も減少している。中国政府も国民の不満を緩和するため、数々の社会的課題の解決にイノベーションが役立つことを期待するとともに、政府としても各社の信用スコアのコア部分を統合して「国民への信賞必罰」に活用しようともしている。
ただ、両陣営のキャッシュレス・ビジネスモデルにも死角はある。サービスの魅力向上競争は農民工が支えており、労働力人口の減少下では持続可能ではないし、現行のサービスの多くは中国人向け(中国語ができる人向け)に特化しており、外国人には利用困難なものが多い。そのような課題の解決(労働集約型から自動化)に日本企業の出番があるのではないかと指摘するのである。
2020年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中国でのキャッシュレス事情がよく分かり、とても参考になりました。
2019年10月27日に日本でレビュー済み
「おわりに」は、生き生きとした文章で好感が持てる。
全体として、中国の最新事情を手際よくまとめている。
注意すべきは、著者が中国本土で勤務している人物であることだ。
当然、書きたくてもかけない事柄がある。
「影」の部分のツッコミが不十分なのはそのせいだろう。
全体として、中国の最新事情を手際よくまとめている。
注意すべきは、著者が中国本土で勤務している人物であることだ。
当然、書きたくてもかけない事柄がある。
「影」の部分のツッコミが不十分なのはそのせいだろう。
2019年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中国に滞在する人が実際の体験を元に書いているのでとても説得力があった。
2019年6月30日に日本でレビュー済み
中国ではネットテクノロジーの進化によるイノベーションが次々と新たな事業を生み、アメリカを脅かすほどに技術大国になりつつあることやキャッシュレス社会化が世界のどの国よりも進んでいることがその象徴的動向であることは相当広く知られるようになった。一方、それは個人情報のビッグデータとAI技術活用によるデジタル監視社会化と表裏一体であることは、一般市民はもちろん、中国に関心のある識者にも未だ自明の認識にはなっていない。
本書の著者は、努力の末に中国の大学教授になり、中国社会で一定の居場所を得た経済知識人であるため、中国のキャッシュレス社会化を経済活性化の原動力と評価しながら、それが中国共産党の統治制度に組み込まれて世界最先端の統制と監視システム社会になりつつあることへの疑念はあまりないように見える。少なくとも本書ではその経済的意味だけの考察に終始し、政治的意味についての判断を極力避けようとしている印象がある。
経済のキャッシュレス社会化とAI技術による監視国家化が表裏一体であることの危険と危惧を理解するためには、本書の一年前の2018年に出た反中国共産党チャイナウッチャーとして知られる宮崎正弘の『AI監視社会・中国の恐怖』と合わせて読むべきだろう。
例えば著者はキャッシュレス経済のリスクについては次のように認識している。
「モバイル決済は、金銭的には「無料」で利用できるが、ユーザーは「個人データ」を対価として支払っている。利用登録には、氏名や年齢、住所、身分証明書番号など、個人情報の提供が求められる。また、いつ、どこで、何にお金を使ったかもわかる。プラットフォーム企業は無料でサービスを提供する代わりに個人データを収集し、それをビジネスと様々なシーンで利用している。」
「学歴や職歴といった個人情報と、資産やローンの返済履歴といった経済的な情報を組み合わせて、その人物の信用度を調査、記録する」民間主導で進められてきた「『信用調査システム』に記録されている情報を、政府部門や企業部門が共有、運用することで、経済活動をよりスムーズにしたり、犯罪を減らし社会の安定を図ったりしようというのが、中国の目指す『社会信用システム』と理解していいだろう。」
「2018年11月、北京市は(略)北京の常住人口の全員をカバーする『個人誠信分』(個人信用スコア)を2020年末までに導入すると明らかにした。(略)この個人信用スコアを最新テクノロジーと組み合わせれば、将来的には様々な可能性が考えられる。例えば、中国の監視カメラネットワーク『天網』の利用がある。」その顔認証技術は「驚異的なレベルに達しており、身分証番号と紐付ければほとんどの国民を、監視カメラを使って特定できるようになるだろう。」 その結果「そう遠くない未来において、最新テクノロジーを駆使して個人の信用スコアを計算する、信賞必罰の時代が現実のものとなるかも知れない」
この部分は宮崎正弘の描写ではこうなる。
「いまや中国はビッグデータで国民一人ひとりの生活を監視し、たとえばクレジットカードの記録から当該人物が何を買って、どういう趣味があり、常連レストランまで把握する。カラオケや風俗店、ラブホテルの利用歴まで掌握されている。
そして近年、顔面認識用の防犯カメラが全国津々浦々に設営され、人権活動家や民主弁護士、外国要人の行き先、会った相手の特定まで行っている。
『中国のビッグデータは国民を見張っている』と『デジタル・レーニン主義』の名付け親であるハイルマン(ドイツの社会学者)がいった。『もはや中国の監視体制は『オーウエルの世界』を超えた』と」
著者は、キャッシュレス決済の利便性を享受するためにはその対価として、その利用行動を含めた個人情報を企業に支払うのは当然であり、それらのビッグデータを政府が国民全体をカバーする「個人信用システム」に組み入れて交通違反などの犯罪防止に利用する「信賞必罰」の社会を目指すのは悪くないと思っているふしがある。
すでに崩壊したソ連や東ドイツなどの共産党独裁の全体主義国家では、個人の来歴や行動の全てが記録されどこに移籍しようがその評価を含めて個人の一生を拘束していた。何事にも徹底する東ドイツなどではそれがひとり当たり数メートルの厚さの書類になっていたことは知られているが、今やそれはデジタル情報として遙かに緻密で膨大な個人の行動記録のビッグデータとして蓄積されSFのディストピアを凌駕するデジタル全体主義国家として結実しつつあることの危険はないのか。
日本も含む自由資本主義国家ではまだ、民間企業が蓄積するビッグデータを政府の国民管理に利用する動きはないと見ていいだろう。だが、スマホ決済・クレジット決済による消費行動や支払状況の信用行動の情報を企業間で共有し、いずれ一元化するのは経済合理性の必然とみなす経済知識人や企業人は少なくないだろう。日本ではキャッシュレス社会化が遅れていると嘆く傾向はその証拠だ。
最近のニュースで、京都の寺社がこぞって賽銭などのキャッシュレス決済を個人情報の収集による宗教の自由を侵す危惧があり導入に反対するとの方針を伝えている。ようやくまともな人々はキャッシュレス社会やクレジット決済におけるビッグデータ蓄積への危険を察知し始めた。日本では未だに現金決済へのこだわりやスマホでなくガラケーで十分とする「健全な経済感覚」を保持する国民が多いことの意味を考えるべきだろう。
とはいえ、本書は読む価値のない本ではない。むしろ宮崎の先の著書では十分伝えていない中国のキャッシュレス社会化への社会的背景やそれがAI監視社会に転化する中国社会の必然性についての出色の報告である。
特になるほどと思わせられたのは、今日の中国のネットテクノロジーが牽引する経済の活性化(著者は「新経済」と言う)の要因として、
1.政府の後押し、
2.それをチャンスとするリスクを恐れない優れた起業家の人材が豊富、に加えて、
3.偽札の蔓延、食の安全性の欠如、詐欺的サービス業の常態、などの信用欠如の社会環境がそれらの問題の解決策として様々な民間の起業を動機付け、結果的に個人の信用評価システムと平行して浸透したキャッシュレス経済の普及が政府に代わってそれらの社会問題を解決しているという指摘である。
われわれが誤解したイメージを持っているように中国は共産党独裁国家として政府が最初からAI監視社会を作ったのではなく、官と結託しながらとは言え自由な民間起業家の競争の果てに作られた巨大なネット経済を支える信用調査システムを政府が簒奪して国民の全ての行動を監視する個人信用システムが構築されつつあるということである。
中国経済の強みは、あの経済破綻して崩壊したソ連などの社会主義と異なり、個人の起業と経済競争の自由をあるレベルまでは放置して新たな事業が育つのを奨励していることだろう。著者は、日本では想像もできない劣悪な社会問題こそが今後ますます「中国新経済」のイノベーションの動機となり「これら中国社会に存在する多くの問題も早晩、解決へと向かって行くに違いない」と、経済発展に楽観的な期待を寄せている。
しかし、民間の事業規模があるレベルを超えた場合、つまり官業と競合したり共産党の権力基盤を脅かすような存在までに成長した場合は、潰されるか政府に吸収されるかであるのは、「中国新経済の二大プラットフォーマー」であるアリババとテンセントの現在をみればよくわかることだ。多数の自由な起業家による経済競争から勝者企業の巨大化と寡占化へ、そして国家の統制による独占化へと進んできた中国経済は、果たしてこれからも経済活性化の必要条件である「自由」な領域を失わずに発展を続けられるのか、
少なくとも「リスクを恐れない優れた起業家の人材が豊富」である限り、米中経済摩擦があろうが、一部の地域で衰退や荒廃があっても反中国論者がいうような破綻や崩壊はないだろう。それが内乱と破壊と統合の繰り返しの歴史の中で安定した相互信用社会をついに築けなかった中国社会を生き延びた中国人のたくましさであり、隣国の日本が決して侮り油断すべきでない中国のリアルである。
本書の著者は、努力の末に中国の大学教授になり、中国社会で一定の居場所を得た経済知識人であるため、中国のキャッシュレス社会化を経済活性化の原動力と評価しながら、それが中国共産党の統治制度に組み込まれて世界最先端の統制と監視システム社会になりつつあることへの疑念はあまりないように見える。少なくとも本書ではその経済的意味だけの考察に終始し、政治的意味についての判断を極力避けようとしている印象がある。
経済のキャッシュレス社会化とAI技術による監視国家化が表裏一体であることの危険と危惧を理解するためには、本書の一年前の2018年に出た反中国共産党チャイナウッチャーとして知られる宮崎正弘の『AI監視社会・中国の恐怖』と合わせて読むべきだろう。
例えば著者はキャッシュレス経済のリスクについては次のように認識している。
「モバイル決済は、金銭的には「無料」で利用できるが、ユーザーは「個人データ」を対価として支払っている。利用登録には、氏名や年齢、住所、身分証明書番号など、個人情報の提供が求められる。また、いつ、どこで、何にお金を使ったかもわかる。プラットフォーム企業は無料でサービスを提供する代わりに個人データを収集し、それをビジネスと様々なシーンで利用している。」
「学歴や職歴といった個人情報と、資産やローンの返済履歴といった経済的な情報を組み合わせて、その人物の信用度を調査、記録する」民間主導で進められてきた「『信用調査システム』に記録されている情報を、政府部門や企業部門が共有、運用することで、経済活動をよりスムーズにしたり、犯罪を減らし社会の安定を図ったりしようというのが、中国の目指す『社会信用システム』と理解していいだろう。」
「2018年11月、北京市は(略)北京の常住人口の全員をカバーする『個人誠信分』(個人信用スコア)を2020年末までに導入すると明らかにした。(略)この個人信用スコアを最新テクノロジーと組み合わせれば、将来的には様々な可能性が考えられる。例えば、中国の監視カメラネットワーク『天網』の利用がある。」その顔認証技術は「驚異的なレベルに達しており、身分証番号と紐付ければほとんどの国民を、監視カメラを使って特定できるようになるだろう。」 その結果「そう遠くない未来において、最新テクノロジーを駆使して個人の信用スコアを計算する、信賞必罰の時代が現実のものとなるかも知れない」
この部分は宮崎正弘の描写ではこうなる。
「いまや中国はビッグデータで国民一人ひとりの生活を監視し、たとえばクレジットカードの記録から当該人物が何を買って、どういう趣味があり、常連レストランまで把握する。カラオケや風俗店、ラブホテルの利用歴まで掌握されている。
そして近年、顔面認識用の防犯カメラが全国津々浦々に設営され、人権活動家や民主弁護士、外国要人の行き先、会った相手の特定まで行っている。
『中国のビッグデータは国民を見張っている』と『デジタル・レーニン主義』の名付け親であるハイルマン(ドイツの社会学者)がいった。『もはや中国の監視体制は『オーウエルの世界』を超えた』と」
著者は、キャッシュレス決済の利便性を享受するためにはその対価として、その利用行動を含めた個人情報を企業に支払うのは当然であり、それらのビッグデータを政府が国民全体をカバーする「個人信用システム」に組み入れて交通違反などの犯罪防止に利用する「信賞必罰」の社会を目指すのは悪くないと思っているふしがある。
すでに崩壊したソ連や東ドイツなどの共産党独裁の全体主義国家では、個人の来歴や行動の全てが記録されどこに移籍しようがその評価を含めて個人の一生を拘束していた。何事にも徹底する東ドイツなどではそれがひとり当たり数メートルの厚さの書類になっていたことは知られているが、今やそれはデジタル情報として遙かに緻密で膨大な個人の行動記録のビッグデータとして蓄積されSFのディストピアを凌駕するデジタル全体主義国家として結実しつつあることの危険はないのか。
日本も含む自由資本主義国家ではまだ、民間企業が蓄積するビッグデータを政府の国民管理に利用する動きはないと見ていいだろう。だが、スマホ決済・クレジット決済による消費行動や支払状況の信用行動の情報を企業間で共有し、いずれ一元化するのは経済合理性の必然とみなす経済知識人や企業人は少なくないだろう。日本ではキャッシュレス社会化が遅れていると嘆く傾向はその証拠だ。
最近のニュースで、京都の寺社がこぞって賽銭などのキャッシュレス決済を個人情報の収集による宗教の自由を侵す危惧があり導入に反対するとの方針を伝えている。ようやくまともな人々はキャッシュレス社会やクレジット決済におけるビッグデータ蓄積への危険を察知し始めた。日本では未だに現金決済へのこだわりやスマホでなくガラケーで十分とする「健全な経済感覚」を保持する国民が多いことの意味を考えるべきだろう。
とはいえ、本書は読む価値のない本ではない。むしろ宮崎の先の著書では十分伝えていない中国のキャッシュレス社会化への社会的背景やそれがAI監視社会に転化する中国社会の必然性についての出色の報告である。
特になるほどと思わせられたのは、今日の中国のネットテクノロジーが牽引する経済の活性化(著者は「新経済」と言う)の要因として、
1.政府の後押し、
2.それをチャンスとするリスクを恐れない優れた起業家の人材が豊富、に加えて、
3.偽札の蔓延、食の安全性の欠如、詐欺的サービス業の常態、などの信用欠如の社会環境がそれらの問題の解決策として様々な民間の起業を動機付け、結果的に個人の信用評価システムと平行して浸透したキャッシュレス経済の普及が政府に代わってそれらの社会問題を解決しているという指摘である。
われわれが誤解したイメージを持っているように中国は共産党独裁国家として政府が最初からAI監視社会を作ったのではなく、官と結託しながらとは言え自由な民間起業家の競争の果てに作られた巨大なネット経済を支える信用調査システムを政府が簒奪して国民の全ての行動を監視する個人信用システムが構築されつつあるということである。
中国経済の強みは、あの経済破綻して崩壊したソ連などの社会主義と異なり、個人の起業と経済競争の自由をあるレベルまでは放置して新たな事業が育つのを奨励していることだろう。著者は、日本では想像もできない劣悪な社会問題こそが今後ますます「中国新経済」のイノベーションの動機となり「これら中国社会に存在する多くの問題も早晩、解決へと向かって行くに違いない」と、経済発展に楽観的な期待を寄せている。
しかし、民間の事業規模があるレベルを超えた場合、つまり官業と競合したり共産党の権力基盤を脅かすような存在までに成長した場合は、潰されるか政府に吸収されるかであるのは、「中国新経済の二大プラットフォーマー」であるアリババとテンセントの現在をみればよくわかることだ。多数の自由な起業家による経済競争から勝者企業の巨大化と寡占化へ、そして国家の統制による独占化へと進んできた中国経済は、果たしてこれからも経済活性化の必要条件である「自由」な領域を失わずに発展を続けられるのか、
少なくとも「リスクを恐れない優れた起業家の人材が豊富」である限り、米中経済摩擦があろうが、一部の地域で衰退や荒廃があっても反中国論者がいうような破綻や崩壊はないだろう。それが内乱と破壊と統合の繰り返しの歴史の中で安定した相互信用社会をついに築けなかった中国社会を生き延びた中国人のたくましさであり、隣国の日本が決して侮り油断すべきでない中国のリアルである。
2019年5月16日に日本でレビュー済み
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中国での駐在経験は20年前から断続的に10年になります。20年前、日本で携帯がまだ珍しかった頃、生まれて初めての携帯は中国で買いました。(正確には支給されたですが...) 数年経って帰国すると日本はi-mode全盛期。やはり日本は進んでるな〜と感じたものです。2度目の赴任は都市部でようやく地下鉄カードなどが出始めた時期。まだまだ中国は発展途上だな〜と感じました。しかしその後の5-6年で一気にデジタル化が加速。現在へと至っています。「中国という国は点で見ても理解できず、線/流れで見なければならない」という中国駐在経験者の多くが感じていることを改めて認識する1冊でした。これから中国に関わる方、中国に興味を持っている方(特に若い方)たちに、点ではなく線で中国を知る良い機会になると思います。
2024年2月20日に日本でレビュー済み
全体主義国家・管理国家の「最先端」をChinaが、爆走している・・・
謎の駅秒でロックダウンしたり、へんな綿棒検査を強制したり・・・
Chinaの人民は、さらなる「動物農場」化している・・・お気の毒だ(アーメン)
世界の他の国々も、政治家が国民から選ばれるのではなく、政治家が国民を「人民」化して、その後に「家畜」化しようとしているのかも知れない・・・
謎の駅秒でロックダウンしたり、へんな綿棒検査を強制したり・・・
Chinaの人民は、さらなる「動物農場」化している・・・お気の毒だ(アーメン)
世界の他の国々も、政治家が国民から選ばれるのではなく、政治家が国民を「人民」化して、その後に「家畜」化しようとしているのかも知れない・・・