【Tの分析】スエズ運河での大型コンテナ船座礁事故に関する一考察

2021/04/10 10:13
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2021年3月23日(午前)、国際的な物流や海上輸送の要衝(パナマ運河等の運河やマラッカ海峡等の国際海峡)の一つ、地中海と紅海を結ぶエジプトのスエズ運河においてエバーグリーン(EVERGREEN)がオペレート・運航する大型コンテナ船(本船名 エバー・ギブン EVER GIVEN)が座礁するといった海難事故が発生した。
現在のスエズ運河に関しては、エジプト、特にエジプトの軍部が中心となっていわゆる「新スエズ運河」が建設された(当初3年以上かかるといわれていたがほぼ一年で建設)こともあり、スエズ運河は現在、エジプト軍部の強い影響下にあるといわれている。
そして2015年にいわゆる「新スエズ運河」として新たに掘った35kmの区間、いわゆる第2レーン・水路と、「既存のレーン・水路(いわゆる第1レーン・水路)」を掘り下げ幅を広げた37kmの区間の大きく二つ区間、計72kmから成る。
いわゆる「新スエズ運河」の開発により、従来の「一つのレーン」から双方向(地中海と紅海を結ぶ)の同時通行が可能となったが、可能となったのはあくまでも一部区間のみであり、すべてが「二つのレーン」となったわけではない。
従来通り「一つのレーンのみの区間」も存在するのである。現在、スエズ運河は、管轄するエジプトのスエズ運河庁によって管理されている。2015年以降、いわゆる「新スエズ運河」の開発により、確かに運河を通行する船舶数は急激に増加した。2019年には1万9千隻の本船・船舶がスエズ運河を通行したといわれている。
だが依然として「一つのレーンのみの区間」が残存しているため、スエズ運河に関する様々なリスクの点で、根本的な要因の一つであるスエズ運河の全区間の双方化が可能となっていないことから、さまざまなリスクや懸念等は依然として残ったままといえよう。
本船「エバー・ギブン EVER GIVEN」が今回、海難事故・座礁したのは、水路・レーンが一つしかないスエズ運河の最南端部の地点であった。加えて、本船「エバー・ギブン EVER GIVEN」は、水路・レーンが一つしかないスエズ運河の最南端の水路・レーンをふさぐ形で座礁したのである。そのためにスエズ運河を通航する本船の流れ、通航が全面的にストップする事態となってしまった。
地中海側や紅海側においてもスエズ運河を通航・利用する本船が足止めされ、滞留された状態になってしまったのである。
そのため、アフリカの南端、喜望峰周り等の通航や利用に切り替えた海運会社や本船も存在するといった情報や商社・貿易会社・メーカー等のなかには輸送中の貨物を利用航路利用本船の様々な寄港地での積み替え、揚げ地や仕向け地の変更を海運会社や関係する輸送会社に対し求めるケースもあったとの情報も一部で流れている。
 
当該本船「エバー・ギブン EVER GIVEN」は、2021年3月29日、離礁に成功した。
当該本船「エバー・ギブン EVER GIVEN」の座礁の状態から、本船「エバー・ギブン EVER GIVEN」の離礁作業は一般に予想された(すくなくとも一週間以上は離礁に要し、長期化するとの情報が流れ、一般にそういった理解が拡散されることになった)のとは違い、一般に考えられていた以上に比較的迅速に離礁作業が行われ、離礁に成功した。

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